Entries
2007.08/25 [Sat]
Rainy Tear・・・
雨が、降っている。
窓から雨の粒が見えて、蔵馬は少し黙り込んだ。
…情事の後のベッドの上で、蔵馬の体が揺れてカーテンの隙間から外を眺める。
「どうした。」
声の主は、そばに寝ていた飛影だった。
いつもはこんなときまどろんでいるだけの蔵馬が動き出していぶかしく思ったのかもしれない。
上半身を出して枕の上でぼんやり天井を眺めていた飛影は、蔵馬をせかすように続けた。
「何か来たのか。」
「あ、いえ、違います。」
雨が降ってきたな、と思って、と、蔵馬はまるで実況中継のような変な答えを返した。
だからなんだ、とでも言われそうな理由だ。
「…?」
だが飛影は何も言わず。
蔵馬の方をきょとんと見た。
「雨?」
それがどうした、と、瞳に書いてある。
やっぱりな反応に蔵馬は心の中だけでため息をついた。
シーツを巻きつけて、カーテンを閉める。
窓の鍵もしっかりと。…本当は、とっくに鍵など閉めているのに、さらに念入りにきっちり、強い音がするまでぐいぐい閉めている。
シャっ、とカーテンを引くと、蔵馬は安心したように、ベッドに戻ってきた。
飛影のそばに入り込んで、飛影に抱きつく。
「蔵馬?」
ふわりと微笑んだ蔵馬の顔は、どこか、いつもと違っていた。
何かに似ていると思って、飛影は「それ」を思い出した。…にて居るのは、いつか蔵馬の家のTVでみた、動物の子供の顔だ。
強がりなくせに、時々こう言う顔をする。
…だが、そんなことも、めったに起きるものではない。
「蔵馬。」
緩やかに蔵馬の髪をすいてやると、甘えるように頬を寄せてくる。
「雨は、好きですか?」
「え?」
唐突な質問に、飛影は一瞬答えられなかった。
ザア・・・
たたく様な音がして、静寂が流れそうになった部屋に、なんともいえない空気が漂う。
「・・・別に嫌いじゃない。」
答えると、蔵馬は僅かに瞳を揺らした。
だがその答えは予想通りだったようで、奥にあるものは、驚きでもなかった。
ただ、ゆれていた。
「俺は、雨が嫌いです。」
…まだ小さかったころ…獣だったころ…雨が降ると、一人でずぶぬれでした。
だから。
ひとりで身を隠していなくてはいけなかった…その記憶がよみがえるから。
…雨が降っている間は、仲間も出てこない。
母親を失ったのも雨の日だった…
いろいろなことが頭に浮かんでくるから。
言って、蔵馬は飛影の胸に寄り添った。
…ザア・・・
ザア・・・
一段と音が激しくなり、カーテンが揺れる。
飛影は、蔵馬を強く抱きしめた。
「…俺が居る…」
耳元でそうっとさ囁いて。
触れるだけの、キスをした。
ちょっとリハビリ感覚で、書いてみました。
実はこれは突然浮かんで文にしてみたものなので、
ちょっと勢い的な部分もあるんですが…
こう言う、テンションに上げ下げが余りない話は難しい~~!!
スポンサーサイト
Comment
Comment_form